たおらの、おはなし。

TAOLA
たおらの、おはなし。
おかえりなさいのひびき
ずっと、待っていました。
小さなころ、
自分だけの場所を、持っていませんでしたか。
押し入れの中。 毛布のなか。
庭の隅っこ。 机の下。
だれにも見つからない、ちいさな基地。
きれいな石。 なくしたくない手紙。
好きな絵本。 すりきれた、ぬいぐるみ。
だいすきな、だいすきな、ぜんぶ。
そこは、たからものを、
しまっておく場所でした。
大人になって、
わたしたちは、その基地に、行かなくなりました。
忙しくて。
「いつまでも、子どもっぽいこと言わないの」と、
いつの間にか、言われるようになって。
もう、現実を生きる大人なのだから、と。
そのうち、そんな場所は、あるはずがないと、
わすれたふりをして、生きてきました。
それが、大人の良識、ということになっている。
ちがうよ。
あの場所は、
まだ、あの日のままに、あります。
だれも、片づけていません。
きれいな石も、絵本も、
あなたが置いた、そのままの場所に。
あのとき、そばにいてくれた、
だれかの気配も、まだ、そこに。
あなたが「ただいま」と、
ふらりと帰ってくるのを、
あの場所は、ずっと、待っています。
懐かしい、も。 だいすき、も。 わくわく、も。
ぜんぶ、いまも、色褪せずに、そこにあります。
そして、その場所が、
歳を重ねたあなたを、もう一度、輝かせる。
ほんとうの自分を、思い出させる。
その場所のことを、
わたしたちは、こう呼びます。
しじま(静寂)。
たおらは、
あなたが、しじまへ帰る、道しるべです。
おかえりなさい。