ヒミツの、おはなし。
ちょっとだけ、不思議なお話を。
しずけさに、身をあずけたときの、あの心地。
あれを、何度でも、あなたに。
そこは、こころとからだの、秘密のシェルター。
雨も、風も、ざわめきも、届かない。
他の誰も、決して入れない、あなただけの場所。
世界にひとつの、個室と、お庭。
鍵は、いりません。
はじめから、あなたの手のひらに、在るから。
赤ちゃんは、みんな、手をぎゅっと握って生まれてきます。
だいじな何かを、誰にも見られないように、隠すみたいに。
——自分だけの鍵を、握りしめてきたのです。
その手のひらの線は、世界にひとつ。
窓でも、扉でも、宝箱でも、庭の門でも。
かざせば、カチッ、と、ぜんぶ開く。
手相占い、ではありません(笑)。
生まれる前から配られた、あなただけの、認証キー。
好きな花を植えて、好きな椅子を置いて、好きなだけ、ぼんやりする。
その部屋と庭には、あなたに必要なものが、余るほど、そろっています。
なぁんだ、人生って、最高の遊園地じゃないか。
だったら、遊ばなきゃ、もったいない。
どうしたら、この一日を、いちばん素敵に遊びきれるか。
子どもは、その名人です。
水たまりひとつ、葉っぱ一枚で、半日、笑っていられる。
……そして、わたしたちは、忘れていく。
鍵は、まだ手のなかにあるのに、かざすことを。
でも、なくしてはいません。置き忘れているだけ。
わたしたちは、この人生で、何を学びにきたのでしょう。
百点を取る方法。お金の増やし方。仕事の結果。
好きな人に、好かれる方法。
どれも大切。でも、いちばんではない。
いちばんは、たったひとつ。自分を、愛する。
自分の部屋を、たいせつにする。
庭に、水をやる。
手のひらの鍵の在り処を、思い出してあげる。
——それが、自分への、手当て。
その手のひらは、二つの顔を持っています。
握れば、あなただけの鍵。
ひらいて、誰かに当てれば、手当てになる。
昔の人は、知っていたのですね。
手を、当てる。それだけで、人が癒えることを。
だから「手当て」という言葉を、のこした。
不思議なのは、ここから。
自分に手を当てるほど——
誰かへ分けられる力が、その手に、静かに溜まっていく。
分けても、減らない。使うほど、満ちていく。
だから、たおらのひとときは、
あなたに差し上げるためだけには、作られていません。
あなたの時間を、心をこめて、満たします。
同じだけ、音を鳴らす、たおらの子どもたちのうつわも、満ちる。
おなじ庭で、いっしょに、水をやりあう。
そういう場所を、つくりたかった。
あなたのなかの、あの部屋を。
てのひらの、あの鍵を。
忘れても、いいのです。
わたしが、ここで、覚えています。
その鍵の名前を、まだ言っていませんでしたね。
ヒミツのカギ、といいます。
だれにも渡さない。あなただけの、ひみつ。
——最初から、あなたの話を、していました。
だから、ここに、残しておきます。
答えではなく、種として。
——さあ。
ここからが、たおらの、おはなし。